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滋賀県の女性経営者にインタビュー

2023.08.08

WRITTEN BY

高橋 有基

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滋賀県の女性経営者インタビュー 09|佐々木美鈴さん(博善社印刷株式会社)

インターネット・電子書籍の普及によって、今印刷業界は生き残りをかけた大きな岐路に立たされているといわれています。

この荒波の中、変革を託され5年前、伝統ある印刷会社のオールを父から引き継いだ女性がいます。それが、今回インタビューさせて頂いた博善社印刷株式会社の代表取締役・佐々木美鈴さんです。
生き残るため、佐々木さんが目指すのは「身近な存在に感じられる印刷会社」。そこには紙媒体ならではの魅力と可能性に溢れていました!

子どもの頃はいつも紙で遊んでいた

「子どもの頃、学校から帰ってくるといつも両親の働くこの会社に訪れて、端材(印刷後に残った不要となる紙)で手紙を書いたり工作して遊んでいました。

紙の魅力はやっぱり、温かみがあってほっとするところ。紙にインクがのっている匂いも好きですね。」
紙ならではの魅力について尋ねると、そう笑顔で話して下さった佐々木さん。

守山市にある博善社印刷株式会社が創設されたのは、今から96年前の昭和3年。ここ滋賀の経済の基盤を築きあげた近江商人の「三方よし」を信念に、佐々木さんの曽祖父にあたる佐々木清一郎さんが始められました。

デザインから印刷まで、オールマイティに対応!

同社はデザインから印刷、製本まで全てを自社で行う印刷会社で、県内でもこれら全てを自社で担うところは少ないといいます。
雑誌や名刺、ステッカーといった小型プリントから、最大30mの大型プリントまでをオールマイティに担います。
今回インタビューさせて頂いた佐々木美鈴さんは同社の4代目にして、初の女性経営者となります。

社長になる気は全くなかった…

昨今では電子書籍で本を読む方も多いですが「紙は燃えない限り、温かいままずっとそこにある。残しておきたい日本の文化」と、佐々木さんは紙の魅力について語ります。

そんな佐々木さんですが、実は当初社長になるという考えは全くなかったのだとか。
「この会社で働き始めたのは、実は20代後半から。最初はアルバイトからスタートした」のだそう。

バラエティに富んだ経歴にびっくり!

さらに驚くのは、それまでの経歴です。

「ここに勤める前には、本当にいろいろなことをしていましたね。元々は医療の専門学校に通っていたので20代前半は院長先生の秘書の仕事を3年ほどしていました。その後はフリーターをしていたんですが、その後どうしてもスノーボードのインストラクターになりたくなって山に移住して。

冬はスノーボードのインストラクター、夏はこっちに戻ってスイミングの先生やその他いろいろなアルバイトをして、途中海外へも行ったりと…本当にいろいろなことをしていましたね。」

現在はインストラクターはされていないものの、実はジャズシンガーとして活躍されているというのだからびっくり!
「最近は週に1~2回、月に10回はライブで歌ってます。仕事が終わってからライブへ繰り出すことも多いんですよ。」

子どもの頃のクラシックバレエの経験が、今も生きている

さらには、子どもの頃はクラシックバレエも経験。
「6歳から続けていたバレエでは、礼儀やしきたりなど、本当にいろいろなことを教わりました。バレエって言葉ではなく踊りだけで伝えなくてはいけないんですが、これが仕事にも大いに役立つんです!

例えば営業のときに先方へこちらの考えを分かってもらうためにはどうすればいいか、先方がどんなことを望んでいるかとか、バレエで教わった表現力とヒアリング力を使えば、それが上手く理解できたり表現できることが多いんです!」
そのあまりの多才ぶりとエネルギッシュな行動力に、編集部も圧倒されまくり!


父から引き継いだ社長の座

そんな佐々木さんを、同社の元社長であるお父様は、どのように見つめられていたのでしょう。
「うちの両親はいわゆる放任主義で、子どもの頃学校を休んでお友達と映画を見に行ったり琵琶湖へ遊びに行ったりしていても、何も言わなかったですね。それだけ、会社の仕事が忙しかったのだと思います。
父は昔気質で多くを語らない人なので、今でも話すことは少ないです。あまり話さないけれど、それでも私のやっていることをしっかり見て分かってくれているという人ですね。」

そんな素敵なお父様ですが、実は当初は「社長は男がやるもの。女性には任せられない。」という考えが強く、佐々木さん自身も「父が自分に社長をさせることはないだろう」と思っていたのだそう。

けれども同社で営業の仕事を通し様々なお客様の信頼を掴んでいた佐々木さんの姿を見ているうちに、お父様の頑なだった固定観念が和らぎ、5年前に荒波を越える活路を、娘である佐々木さんに委ねることに決意しました!

ニッチな要望にも応えてくれる、身近な存在の印刷会社

こうしてお父様から伝統あるオールを引き継ぐことになった佐々木さんが就任当初より掲げているのは「身近な存在に感じられる印刷会社」です。
「印刷会社というと、どうしても雑誌などたくさんの枚数でないと注文できないように思われてしまいがちですが、同社では小さなステッカー1枚から注文してもらうことができるんです。」

子どもの描いたイラストをメモ帳にして家族の分だけ印刷してほしい、スポーツクラブのオリジナルステッカーを団員分印刷してほしい…など「こんなのあったらいいけど、どこに頼めばいいのかな~」といったニッチな注文への対応が、同社では可能。

「創業約100年の会社なので、なんせ紙も色も種類が多くて。
その種類は私たちでも把握しきれないほど!それだけいろいろな要望に応えることができるんですよ。」
頼もしい表情で熱く語る佐々木さん。

「世の中に感謝を増やしたい」との思いから始まったサービス「たたえーる」

従来の同社では大量印刷が仕事の主流でしたが、佐々木さんはあえてこの伝統にメスを入れ少数の印刷に目を向けることが、紙媒体の良さを多くの人に実感してもらうきっかけに繋がるのだと考えているとのこと。

こうした思考の転換から、現在同社で力を入れているサービスが「たたえーる」です。「世の中に感謝を増やしたい」という思いから始まったこのサービスは、ネットで簡単にデータを感謝状を作ることができるサービス。
自宅のプリンターからでも無料で印刷することができますが、同社に受注すればフレームや賞状筒のオプションも追加できるので、お世話になっている方への感謝がさらに伝わりやすくなります。母の日の贈り物にも人気なのだとか。
これこそ、デジタルではできない紙媒体ならではの温かみに溢れたサービスですね!

滋賀愛に溢れた商品がいっぱい「てのばし工房」

同社でも販売されている文房具ブランド「てのばし工房」も佐々木さんが就任から力を入れている商品!こちらは佐々木さんと同社の従業員の方の滋賀愛に溢れた商品となっています。

メモ帳や便箋、紙でできた抗菌性のランチョンマットなど、様々なジャンルのアイテムにはどれもほんわか優しいタッチで滋賀のアイテムがプリントされています。
どれも遊び心に溢れた商品ばかり!「てのばし工房」は同社のECショップや県内の本屋やデパートでも販売されているので、見つけた際には、ぜひ手に取ってみて。

「私自身、昔は滋賀なんてただの田舎だと思っていましたが、大人になるにつれて滋賀の魅力に気付いた一人。
人があったかくてごはんが美味しくて琵琶湖があって。そんな滋賀をもっと好きになってもらって、全国に滋賀の良さを広めたいですね!」

デジタルも上手く活用

さらにはこちらも新たな試みである、作ったチラシをそのまま動画にできる「カミカラムービー」やホームページの制作、テレビCMの制作といったデジタル事業も多く展開。
紙ならではの魅力も大事に引き継ぎながら、ときには紙媒体の天敵ともいえるデジタルを上手く活用する、その潔さもこれからの印刷業界に必要となってくるものなのでしょうね。


斬新なアイディアと商品を生み出した、様々な改革

こうした斬新なアイディアや商品は、どのように生まれているのでしょうか?実はここにも、佐々木さんならでの転換がありました。

「以前の同社の会議は、父の意見をみんなが黙って聞いているだけのスタイルだったんです。それをどうにか変えたくて、今はみんなが意見を出し合う賑やかな会議にチェンジさせました。
「たたえーる」やてのばし工房の商品も、この賑やかな会議から生まれた商品なんです!」

また、同社ではお互いの顔が見えることにもこだわっています。
「同社では毎朝朝礼をして、ラジオ体操の第一と第二をみんなでやっているんです。それから全員で円陣を組んで今日の目標を言葉に出して言ってから、一日をスタートさせています。」
同じ屋根の下で仕事をしていても、部署が異なると全く話さない方もいるそうですが、この毎朝の習慣によって皆がお互いを認識できるようになったのだとか。

お客も社員も皆が喜びあえる「三方笑顔」

2年前には会社の社訓を「三方よし」から「三方笑顔」へチェンジ。

「お客さんが笑顔になる。社員が笑顔になる。社会が笑顔になる。地域が笑顔になる。皆が共に喜び合い笑いあえる、そんな会社にしたいと思っています。」
様々な職種や経験を経た佐藤さんが引き起こす、大きく頼もしい波が向かう先。

博善社印刷株式会社の新たな時代は、まだ始まったばかり。

moa読者へのメッセージ

「失敗しても、やってみればいいんです。そこ(失敗)以下はないから。やってみたら、何かが変わる。何かが見えるはず!」

輝く笑顔で語ってくださった佐々木美鈴社長、大変お忙しい中ご協力頂きありがとうございました!



「てのばし工房」商品・コースター

「てのばし工房」商品・一筆箋

「てのばし工房」商品・紙製抗菌ランチョンマット

「てのばし工房」商品・レターセット

工作に利用できる端材

同社で「てのばし工房」商品を購入すると、印刷の際に残った端材をもらうことができますよ。
佐々木さんも小さな頃工作に使用されていたという端材、お子さんの工作の宿題にも役立ちそうですね!

博善社印刷株式会社

〒524-0012
滋賀県守山市播磨田町38-4
TEL. 077-582-5050
FAX. 077-582-5058

【加盟団体・資格】
滋賀県印刷工業組合、警察官友の会、守山市商工会議所、滋賀県防衛協会、滋賀県倫理法人会、びわ湖放送代理店、守山野洲勤労福祉サービスセンター、滋賀県・守山市・野洲市登録指名業者、グリーン購入実践プラン滋賀県登録09GPP031
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高橋 有基

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