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滋賀県の女性経営者にインタビュー

2023.11.28

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高橋 有基

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滋賀県の女性経営者インタビュー 10|片岡 理佐さん(マザーレイク株式会社)

昨年の厚生労働省調べによると、現在の平均寿命は男性が81,47年、女性が87,57年。90歳まで生存する人の割合も増加しているといいます。長い老後生活、介護サービスを受ける方も多いでしょう。
そこで今回お話を伺ったのは、大津市にあるマザーレイク株式会社代表取締役を務める片岡理佐さん。同社は6つの介護サービスを柱にきめ細かな利用者への対応を行い、利用者から高い満足度を得ている介護サービス事業所です。
介護サービスとはひと口に言っても、一体どんなものがあるの?自分や大切な家族が介護状態になったとき、だれに相談すればいいの?など、老後・介護に関して多くの方が抱える不安と疑問。
そんな老後・介護に関するアレコレや、高い満足度の秘密について、おでかけmoa編集部がお話を伺ってきましたよ!

マザーレイク株式会社の行う介護サービスは、主に5つ

2001年大津市に設立されたマザーレイク株式会社は、現在大津・草津で4つの事業所を運営しています。
そのなかで行っている介護サービスは、大きく分けて5つ。

家から離れて施設で生活する「グループホーム」
自宅で適切な生活支援を受けられるように介護のプロであるケアマネージャーが各種介護サービスを代行してくれたり本人や家族の希望に沿ってケアプランの作成もしてもらうことができる「居宅介護支援事業所」
日中を施設で他の利用者と過ごすことができる「デイサービス」
必要な介護サービスを組み合わせて利用できる「小規模多機能型居宅介護」
医療面にも対応可能なスタッフが自宅まで訪問してくれる「訪問介護」

ひと口に介護サービスといっても、サービスを受ける利用者やその家族のタイプや望みはバラバラ。
受けたいサービスも異なるため、これだけの選択肢が備えられている事業所があるのは、頼もしい限り。
事業所によって受けられるサービスの内容や種類は異なるため、もしもの将来のために、お近くの事業所のサービス内容を前もって確認しておくと安心してそのときを迎えられるでしょうね。

会社設立のきっかけは、2000年に制定された介護保険制度

そんな充実した介護サービスと高い満足度を支える同社の代表取締役・片岡さんですが、実は創業当初の代表を務めていたのは、片岡さんの義理のお母様でした。
きっかけとなったのは、2000年に制定された、65歳以上の第1号被保険者を対象とした介護保険制度。
※40歳から64歳までの医療保険加入者はサービス対象ではありませんが、支払い義務があります。ただし特定疾病に該当し介護認定を受けた場合に限り、サービスの受給対象となります。

介護保険制度は、日本国内で進む高齢化を受け、高齢者自身の不安やその家族の介護負担などを社会全体で解決するための仕組みを整えるために作られた法律です。

利用対象者は介護保険の認定を受けることが必要となりますが、掃除や洗濯、身の回りのお世話をしてもらうことのできる訪問介護サービスやデイサービスなどの通所サービス、福祉用具をレンタルできるサービス、住宅をバリアフリーに改修する際の補助金支給など、様々なサービスを受けることが可能となり、対象の方にはとても頼もしい制度となっています。

介護保険法の制定で、利用者や家族の抱える問題は減少

この介護保険法制定によって、導入以前の老人福祉制度や老人医療制度で問題となっていた「長引く介護生活での経済負担」、「要介護者が長期的にサービスを受けられるための環境の不備」といった多くの問題が激減しました。

何より片岡さんの亡くなられたお義父さまが生前に自宅隣の空き地を有効活用したいと望まれていたこと、お義母さまも介護保険法制定の追い風を受けて「ここで民間の介護施設を始めれば、土地の有効活用ができるうえ、収入に変えることができるのでは?」と考えられたことでご縁が重なり、会社設立へと至ったのだとか。

パート勤務後、代表取締役に就任

片岡さんも設立当初よりパートとして勤務。お子さんもまだまだ小さく、ときには仕事場へ連れて行くこともあったそうですが、小さな頃から祖父母と生活を共にしてきたことで高齢者との心の距離感もなく、介護に対してもあまり身構えずに取り組めたのだといいます。
「介護のお仕事をしていると聞くと、大変なイメージを持たれる方も多いですが、人生の先輩からいい刺激をたくさんもらえるし、何より感謝の言葉をたくさん聞ける素敵な仕事なんですよ。」柔らかな笑顔で語る片岡さん。


設立から10年目の2011年には、いよいよ代表取締役に就任。
そこでいち早く目を付けたのは、いまの充実した介護サービスに繋がる事業の拡大でした。実は創業当初のサービスの柱は「グループホーム」と「デイサービス」の2つでした。
その他のサービスを拡大させたのは、片岡さんでした。

スタッフのモチベーション維持が要

拡大の背景にあったのは、意外にも利用者のニーズ拡大よりもスタッフのモチベーション維持が大きいといいます。

「長所も多い介護職ですが、やはり人間を相手にするお仕事ゆえ、ときには利用者の方からお叱りを受けることもあって。でも、こうしたお叱りの原因はスタッフの何気ない態度が発端となっていることが多いんです。だから利用者のためにもスタッフのモチベーション維持を常に考えることが、私の一番の役割だと思っています。」

スタッフの能力が発揮できるよう働く環境を整備

「例えば現在グループホームに従事しているスタッフでも、もしかしたら他のお仕事のほうがもっと向いていて、さらに能力を発揮できるかもしれない。
事業を拡大することで、スタッフに適した仕事に就いてもらうことができますし、さらに上を目指して別のお仕事や役職に着いてもらうこともできるんです。

あとは介護保険法の勉強会も定期的に実施しているんですが、スタッフの学習向上に役立つように学んだ内容を研修会で話してもらったり、スタッフの自信を高められる場作りを増やすことも心掛けていますね。」

スタッフが適材適所で能力を発揮できる環境を整えること。
これこそが、利用者の満足度の向上に繋がっているのですね!

弛まぬ努力でスタッフの定着率も◎

片岡さんはこうしたスタッフの適材適所を見極めるため、各事業ごとの責任者と話をしたり「一期一会Card」と呼ばれる利用者やスタッフとの素敵なエピソードを記すカードを定期的に全員に記してもらい、その解答から適職を導き出すこともあるそうですよ。
こうした地道な努力からか、同社では出産育児休暇後も戻ってくるスタッフが多く、離職率も低いのだそう!

子どもが3歳になるまでは非常勤で働くことも可能にするなど、臨機応変に対応してスタッフの仕事と育児のグッドバランスを保ちやすくされているそうですよ。
「介護職と聞くと、どうしても大変なお仕事なのでは?私にはできないのではないか……と身構えてしまう方も多いかもしれません。

ですが、時代の変化と共に介護業界にもICT化が進行していて、見守りセンサー付きのベッドなど文明の利器のお陰で従来の仕事内容より働く人の大変さが大幅に緩和されているんです。ぜひ多くの方にチャレンジしてもらいたいですね!」

片岡さんのリフレッシュ方法とは?

そんな愚直な努力でここまで会社を支え、大きくしてきた片岡さん。
ときには異業種の友人と話し、介護とは別の世界を見ることで刺激を受けると同時にリフレッシュしているのだとか。

他にも、コロナ前にはよく海外旅行へも出かけられていたという片岡さん。
「海外へ行くと日本の価値観との違いを思い知ることも多くありますね。ですが「年配者を敬う」という習慣はどこの国へ行っても同じように感じられました。
また介護技術においては、日本は世界でもトップクラスを有していると感じます。これは誇らしい点ですね!」

片岡さんはその広い視野を活かし、外国人労働者の積極採用にも注力。
同社では現在外国人の介護職さんが3名おられ、中には介護福祉士の国家資格を持つ外国人職員もおられるとのこと!

今年からは新たな事業もスタート!

目の前のことに日々対応されながら、リフレッシュ時にも異業種や国外など広い分野に目を向けるなど、常に学びを続ける片岡さん。

実は今年から、新たな事業もスタート!大津市役所の窓口で介護に関する相談を委託する「南第二あんしん長寿相談所」を開設されました。

こちらでは利用者本人や家族からの不安はもちろん、ご近所の方を心配されて相談される方もいらっしゃるのだといいます。
介護に関するお悩みであればだれでも気軽に相談できるとのことなので、お近くの方はぜひ利用されてみて下さいね。

こちらの事業は、他地域でも広まってきている事業なのだとか。

一期一会

素人では理解が難しい介護保険法や、核家族化による高齢者の孤立。
日本の介護分野はまだまだ問題が山積みですが、こうしたひたむきで温かな民間業者がすぐ近くにあることは、大切な家族や将来の自分自身の老後生活にとって、大きな心の支えとなってくれそうですね!

「このお仕事をするうえでモットーとしているのは、一期一会。高齢者の方は今日元気にしていても明日はどうなるか分からない。だからこそ、ご縁を大事にしながら接していきたいと思っています。」
凛としたお姿と優しい眼差しが印象的だった片岡さん。
同社のお仕事以外にも地域のケアマネージャーとしても従事されているそうなので、どこかでお会いできる機会もあるかもしれませんね。

moa読者へのメッセージ

最後に、moa読者へのメッセージを頂きました!

「現状維持は衰退。時代はどんどん変わるんだから、新しいことにチャレンジしていくことを大切にして下さい。
新たな世界では新たな出会いがあります。しんどいこともたくさんあるかもしれませんが、丁寧に仕事をしていれば、誰かが必ず見てくれているので大丈夫。何か困ったことがあっても必ずその行いがご縁を繋いでくれるので、自信を持って!」


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高橋 有基

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